事業の全体計画

1.事業の趣旨

 生命の維持、種の存続、さらに適応と進化など、生命機構に必要な基本遺伝子は生物の種を超え類似している。ショウジョウバエの全遺伝子数は約13,000で、ヒトの約半分であるが、相同性の高い(約60%)共通な機能を持つ遺伝子が多く発見されている。さらにショウジョウバエにはこれまでに解明されている遺伝子数が他の生物と比較して最も多く、突然変異系統数も圧倒的に多い。系統を多く収集、保存管理して研究に迅速に提供できる基盤整備はライフサイエンス研究の推進に不可欠である。特に全遺伝子に対応する突然変異系統の作製が可能なショウジョウバエのモデル生物としての重要性が高まっている。このような状況において、ショウジョウバエの突然変異系統を網羅的に収集し、ポストゲノム研究に必要な遺伝資源を維持し研究を支援する研究基盤体制の整備が本事業の趣旨である。

2.事業概要

1. ショウジョウバエ遺伝資源の総合的管理・開発・提供事業。
突然変異系統の収集。突然変異系統、野生型系統、染色体異常系統など、標準系統として使用されてきた重要な系統を7,000系統にまで拡大する。また、ショウジョウバエの全遺伝子13,000に対応する突然変異系統の維持管理を整備し、迅速な研究の進展を支援できる体制を整備する。そのためゲノムワイドなP因子やピギーバック等の挿入系統を京都工芸繊維大学と国立遺伝学研究所で各々10,000と5,000系統収集する。国内開発系統の収集を優先し、有用系統を諸外国から収集、維持する。新しい系統の開発研究を行い、系統のゲノムマーカーを用いた系統管理と複数遺伝子を対象とする量的遺伝形質の系統情報の提供体制の確立を企画する。

3. 日本産ショウジョウバエの収集・保存・提供事業。
日本産ショウジョウバエ,50種300系統の野生型系統の採集や収集をおこない,近交系統の確立など標準的系統を作成する。種の分類のできる研究者の養成を中核機関と連携しながらおこない,ショウジョウバエ研究のための日本産ショウジョウバエの維持・提供及び系統のデータベース化もあわせておこなう。

4. ショウジョウバエ近縁種の突然変異系統の収集・管理・提供事業。
ショウジョウバエ近縁種に特徴的な生物現象の研究材料として、特にアナナスショウジョウバエとカスリショウジョウバエの突然変異系統と標準系統の収集・管理・提供は国際的規模で行う。あわせてその他の近縁種の突然変異系統の維持・管理・提供も行う。系統分類の後継者育成プログラムを企画、実践する。