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第15回 公開セミナー

日時:2004年12月21日(火)14時00分〜16時00分
場所:京都工芸繊維大学 総合研究棟4階 多目的室 (案内地図)
参加資格:不問(予約は必要ありません)


 八木 克将 氏
 名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻

 演題:『ショウジョウバエ自然免疫を制御するシグナル伝達系

 要旨: 生物は体内に侵入してくる微生物やウィルスなどを排除する生体防御機構を発達させている。自然免疫は多くの多細胞生物に見られる生体防御機構で、脊椎動物や昆虫も含む多くの生物が持つ生体防御機構である。これまでにショウジョウバエでは自然免疫のうち、微生物の感染に反応し、抗菌ペプチドの産生を行う系が特に詳しく解析されてきた。その過程で自然免疫のシグナル伝達機構に昆虫とほ乳類の間で数多くの共通性があることが明らかになってきた。
 本講演では最近のショウジョウバエを用いた自然免疫系の研究を、我々自身の成果を交えながら紹介する。


 深津 武馬 氏
 産業技術総合研究所 生物機能工学研究部門
 生物共生相互作用研究グループ

 演題:『昆虫の内部共生微生物:見えない存在が関わる多彩な生物現象』

 要旨:  昆虫類は既知の生物多様性の過半数をしめており、陸上生態系の中核をなす生物群である。その半数以上は何らかの微生物と恒常的もしくは半恒常的な共生関係をむすんでいるものと推定されている。
 アブラムシ類はほぼ例外なく、必須アミノ酸などを生産する細胞内共生細菌Buchneraを保有している。アブラムシはこの微生物なしでは子孫を残せず、両者の共生関係は1億年以上にわたり続いてきた。
 しかしBuchneraばかりがアブラムシの共生微生物ではない。多くのアブラムシ類ではBuchneraに加えて、もう1種類の共生細菌を保有していることが普通であり、これらは二次共生細菌と総称される。たとえばエンドウヒゲナガアブラムシの野外集団中には少なくとも5種類の二次共生細菌が存在するが、いずれも感染頻度多型を示し、集団中に固定していない。こういった非必須共生者については、宿主アブラムシの適応度にどのような影響をあたえているのか(相利?寄生?それともコンテクスト依存?)、宿主体内で必須共生者であるBuchneraとどのような相互作用があるのか(競争、協同、分業、棲み分け?)、宿主集団中での維持機構はどうなっているのか(どうして固定も消失もしないのか?)など、さまざまな興味深い問題が存在する。
  本講演ではアブラムシ類を例にとって、複合内部共生システムの多様性、進化、起源およびその生物学的意義についての最新の知見を、具体的な事例やデータに即して紹介し、さらにその生物進化における一般的重要性について議論する。
Refs: Tsuchida et al. (2004) Science 303,1989; Koga et al. (2003) Proc. R.
Soc. Lond. B 270, 2543; Tsuchida et al. (2002) Mol. Ecol. 11, 2123


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