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系統専門委員がDGRCの活動への意見書を提出

 9月4日に視察に訪れて頂いた小林、三浦系統専門委員から意見書を提出して頂いた。これを受け、2013年度末を期限にDGRCの報告書を準備することになる。


意見書

平成24年度DGRC系統専門委員
基礎生物学研究所 小林悟

  1. センターの業務は効率化され多くのショウジョウバエストックを維持するために非常によいシステムであると評価できる。
  2. リソースは研究の要であり、今後もストックは維持していっていただきたい。
  3. しかし、予算の減額等が生じた場合は、リクエストがほとんどないストックを別の方法で維持することが重要となる。例えば、始原生殖細胞の凍結保存とその始原生殖細胞からの配偶子形成の方法開発等を開発するべきであろう。

  4. 今後のセンターの発展のために
  5. センターにおける研究も推進し、その研究で使える系統を完備する。その研究の発展および求心力によって、センターならびにストックの重要性をコミュニティに広めることができる。
  6. たとえば、ショウジョウバエの発生段階や組織/細胞種特異的な遺伝子発現ドライバー系統を完備することにより(その系統における発現データも解析しデータベース化する)、外来遺伝子を簡単にかつ信頼性高くある細胞で発現させることができる研究のシステムを構築する。これは、ショウジョウバエのコミュニティーだけでなく、それ以外の生物を使っている研究者にとって、マウスやヒトなどの遺伝子を発現させることが容易となり、ショウジョウバエにおいてそれらの機能解析や遺伝学的相互作用する遺伝子を見いだすこと等が可能となる。
  7. このような研究システムを構築することが基盤となり、それをトレーニングコース等によりショウジョウバエコミュニティ以外にも周知し、共同研究を受け入れる体制を整えれば、センターの求心力は飛躍的に増大すると思う。
  8. 研究だけでなく、高校の教育等に貢献することも重要と思える。例えば、掛け合わせ等ができるハエとバイアルの遺伝学のセットや、各種突然変異を観察することができる系統のセットを、配布する中核になれば、教育面でも注目される施設となりうる。これは、今後大学生さらに大学院生となって研究者をめざすものにとって影響力は大きい。


平成24年度DGRC系統専門委員
東京大学大学院薬学系研究科 三浦正幸

 DGRCは系統数約27,000を有する世界最大規模のショウジョウバエ遺伝資源センターである。始めに高野敏行教授、都丸雅敏助教に施設を案内していただいた。全ての系統は安全のため2つの独立した飼育室にて2重に維持されている。外からの系統は二重扉、パスボックスを備えた1階の検疫室にて検疫を受け、それから2階の系統維持飼育室に入れられる。このダニから系統を守る物理的な隔離に関してはマウスSPF室のレベルに近い。系統維持室では1系統あたり2−3本の飼育瓶で維持されているが、ここで働く非常勤技術補佐員は系統維持の際に気づいた系統の状態を記録し、健康状態の悪化が認められる系統に関しては、ショウジョウバエ系統に詳しい専門の技術員(ショウジョウバエドクター)によって、その系統の維持方法を個別に検討するという丁寧な飼育体制がとられている。80Lもの餌を作る機械や、ガラス瓶洗浄機を見学した。ガラス瓶洗浄機は優れたもので、洗浄コスト、実験ゴミの削減に役立っていると思われる。20人以上の非常勤技術補佐員が、それぞれのセクションで責任感のある、てきぱきとした働きをしているのを見て感心した。
 次に伊藤雅信センター長から説明を受けた。有用な系統を増やしつつ、利用が殆どない系統をどうしていくかなどの課題を話していただいた。バイオリソースからの予算が半減され、ポスドクなどのポスト削減で、業務に実際にかかわる非常勤技術補佐員を減らさぬよう対処したという。大学からの運営費もバイオリソースに近い額が投資されているため、大学へのアピールも必要である。高野敏行教授、都丸雅敏助教と自由に具体的な現状や改善やについて意見交換を行った。以下、今後のDGRCに対するコメントを記する。

  1. 系統の新規コレクションについて
    センターとしては数千の新たな系統を受け入れる能力がある。これをショウジョウバエコミュニティーに認知してもらい、新たなアイデアで作成するスクリーニング系統を入れてもらう。GSやNPのような独自性の高いものはDGRCのコレクションとして高い需要が見込まれる。

  2. DGRCの共同利用機関としての活用
    若手の研究者が新たなアイデアで、ショウジョウバエラボ以外でハエの仕事を始めようとする場合、DGRCと共同で行うのは良いと思う。一定期間、DGRCに研究者が来て、そこで系統を作るなどの研究活動が出来ればいい。幸い、宿泊施設もあるので可能ではないか。

  3. 学生の受け入れ
    DGRCの運営は予算的にもKITに依存するところが多く、KITとの研究交流が重要と考える。学生への講義、卒業研究、大学院生の受け入れにより、たえず、数人の学生がDGRCで研究を行う事で、このセンターがKITの中でも重要な教育研究施設として位置づけられる。

  4. 中高生教育用ショウジョウバエ遺伝学学習キット
    遺伝子組換えでない、中学、高校で使えるハエの遺伝学学習キットを、実習のテキストとともにキット化する(有料配布で行ってもよい)。積極的に広報すると、かなり需要はあるのではないか。大学の理科系教育学部にも宣伝する。

  5. 発現部位のよく分かっている実績のあるGal4系統を発現データとともにデータベースに整理して、組織特異的な発現実験に使うスタンダード系統を提供出来るようにする。発現部位の特異性のみならず、発現の強さにも気を配る。脳、神経、表皮、腸、生殖細胞など、それぞれの研究者に実績のある系統を挙げてもらう。

  6. 医学系研究者にもDGRCをアピールする。ハエを扱ったことのない研究者に対してハエの基礎的なトレーニングコースを行うことで、ハエを使う研究の認知度を高め、DGRC系統の利用者の裾野を広げる。

  7. 国内の研究者が作成したリクエストされる頻度の高い系統をDGRCに寄託することを促進する。JDRC10での宣伝、寄託方法の簡単なやり方を紹介する。 
以上です。DGRCを見学し、説明をいただいて、この施設が世界に誇る、科学への世界貢献をする素晴らしい施設であることを改めて認識しました。

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