京都工芸繊維大学

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第9回 公開セミナー

第9回 公開セミナー

日時:2003年3月26日(水)14時30分~17時00分
場所:京都工芸繊維大学 工繊会館1階 多目的室(案内地図)


 初見 真知子
 島根大学大生物資源科学学部

 演題:『キイロショウジョウバエの性ペプチドと卵成熟』

 要旨:

 キイロショウジョウバエの雄の副精巣で合成され、交尾とともに雌に伝達される性ペプチドは、再交尾拒否の誘発、産卵・排卵の促進に加えて、ステージ14の卵細胞を成熟卵にする働きがある。卵成熟の機構を解明するために、交尾しても成熟卵を作らない fs(3)FK6 、及び、未交尾なのに成熟卵を持つ雌不妊 lz について分析を行っている。 fs(3)FK6 では濾胞細胞が野生型の半分であることが示された。不妊 lz 雌は卵巣中に成熟卵だけでなく、付活卵を持つことが明らかになった。また、交尾した野生型雌では囲心細胞に性ペプチドが運ばれることが相垣により示されているが、不妊 lz 雌では、性ペプチドが囲心細胞に運ばれないことが示された。

 仁木 雄三
 茨城大学・理学部・自然機能科学科

 演題:『ショウジョウバエの生殖系列の細胞培養
     ―遺伝子導入および長期冷凍保存システムの開発に向けて―』


 要旨:

 ヒトを含むほ乳類では、胚性幹細胞を用いた遺伝子改変技術が開発され、生命科学の基礎的な分野のみならず、 医学・畜産学などの様々な分野に応用されている。胚性幹細胞は全能性を保持し、生殖系列の細胞にも分化するため、遺伝子改変された細胞から子孫を得ること が可能である。ショウジョウバエなど様々な昆虫でも長期的に安定な細胞培養株が数多く確立されているが、これら全てが体細胞由来であり、遺伝子改変は可能 であっても、これらの細胞から子孫を得ることはできない。もし、生殖系列の細胞培養化が可能で、培養化した細胞を遺伝子改変し、しかも子孫が得られれば、 今後様々な分野に非常に有効なシステムになると期待される。
 我々は、キイロショウジョウバエで生殖幹細胞が分化能を失って卵巣内で生殖幹細胞が異常増殖する卵巣腫瘍化突然変異体bag-of-marble (bam)を用いて、生殖幹細胞の長期的な細胞培養化に成功している。また、bamの生殖幹細胞を適当な宿主胚に移植すると再び、生殖巣内に取り込まれ、 成虫の生殖巣で増殖し、しかも、heat-shock promoterを組み込んだ野生型bam+を強制発現すると正常な生殖細胞へ分化することが分かった。現在は、これらの培養細胞に遺伝子が導入できるか どうか検討中である。
 さらに、野生型の幼虫の生殖巣から、卵原細胞と将来成虫の生殖巣を形成する体細胞の長期的な細胞培養化にも成功している。これらの細胞は、-70℃で冷 凍保存をした後も、解凍後、生存し分裂を再開した。このことは、ショウジョウバエの系統の長期的保存にも非常に有効であることを示唆している。

 澤 正実
 愛知教育大学生物学教室

 演題:『カブラハバチのクローン個体作成』

 要旨:

 カブラハバチは、成熟未受精卵を人為的に単為発生させることができ、昆虫類で唯一、顕微授精が可能であ ることから、昆虫卵の付活や受精のメカニズムを調べる研究材料として、他の昆虫にない有利な点を持っています。今回は、自然産卵直後の受精卵に紫外線を照 射して卵核が発生に関与できないようにし、その卵に引き続き30分間の高温処理(39.0℃)を行い、雄性前核を単独で発生に参加させる手法により、受精 卵の父親のクローン個体と考えられる個体が作成できたので、その成果について報告します。
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