京都工芸繊維大学

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第25回ショウジョウバエ遺伝資源センター公開セミナー

 下記のように第25回ショウジョウバエ遺伝資源センター公開セミナーを京都工芸繊維大学松ヶ崎キャンパスにて開催します。
 ハエで疾患研究(感染症、がん)のお話になろうかと思います。
 多数のご参加をお待ち致しております。

日時:2012年 1月30日(月)午後2時から4時30分
場所:京都工芸繊維大学松ヶ崎キャンパス総合研究棟4階多目的室
   (京都市左京区松ヶ崎御所海道町)

講演:
嘉糠洋陸 (東京慈恵会医科大学熱帯医学講座教授)
・病原体を媒介するハエのバイオロジー
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病原菌(GFP)を摂食したショウジョウバエ個体
 感染症の本質は、個体と病原体に存在する「侵入する・侵入される」という単純な生物学的関係にあるといえる。感染症に関わる宿主側調節因子や病原性因子が明らかとなり、そこから病原体と宿主間で成立する相互関係が理解されれば、感染症を支える共通フレームの俯瞰に結びつくと期待される。そのためにも、近年の生命情報の革新的進歩を踏まえ、病原体と個体(宿主・媒介者)の“一対一の局面”の中でどのような現象が起きているのか、あらためて見直す必要に迫られている。
 宿主は、病原体に対峙したとき、二通りの異なった抵抗戦略をとると考えられる。侵入した病原体に対して、それらを排除するための「レジスタンス機構」、もうひとつは、その病原性と共存する「トレランス機構」である。前者には自然免疫や獲得性免疫等が含まれるが、後者については、その存在を含め大部分が明らかになっていない。また、一見すると共生関係が成立している関係においても、このレジスタンスとトレランスが複雑に絡み合っていることが徐々に明らかとなってきた。
 我々の研究グループでは、ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)を病原体媒介モデル生物として用い、主にトレランスなどの病原体—媒介者間相互作用について研究を進めている。これらのモデル生物を軸に、感染事象を徹底的にマニピュレーションすることによって明らかにした感染抵抗性に関わるメカニズムについて、特にハエ類による病原体の機械的伝播を中心に最新の知見を紹介したい。

井垣達吏 (神戸大学大学院医学研究科特命准教授)
・細胞社会に見る競合と協調の分子基盤
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ショウジョウバエ上皮における正常細胞(マゼンタ)と前がん細胞(緑)の競合
 「競合」はあらゆる生命活動の根幹を成す現象であり、「適者選択」の原理を通じて生命の生成・維持・進化を駆動する原動力となっている。近年、このような生物個体間で働く適者選択システムが、多細胞生物を構成する細胞間のレベルでも存在することが明らかとなり、「細胞競合」と呼ばれるようになった。細胞競合は、同種の細胞間で相対的に適応度の高い細胞(winner)が低い細胞(loser)を積極的に排除する現象であり、正常発生において動的に制御される組織構築過程や、ニッチにおける優良幹細胞の選別、さらには組織に生じた異常細胞の排除など、多様な生命現象に関わることが示されつつある。我々はこれまで、ショウジョウバエ上皮に生じた前がん細胞が細胞競合によって組織から排除される現象を見いだし、そのメカニズムを明らかにしてきた。一方、細胞社会には細胞同士の「協調」機構も存在し、細胞競合と同様に組織・器官の発生やその恒常性維持、さらにはがんの発生・進行に重要な役割を果たしていると考えられている。これら細胞社会の競合/協調機構について、ショウジョウバエモデルを用いた我々の最近の研究を紹介し、上皮の恒常性維持とがん制御の観点からその分子基盤について議論したい。








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